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最新人事労務耳寄り情報ー従業員に不利益な就業規則新設

  • 5 時間前
  • 読了時間: 4分

就業規則

少子高齢化に伴う市場の縮小や経営の悪化などにより従業員に不利な就業規則を新設したい場合、どのような点に気をつける必要があるでしょうか。


この点について問題となったのが令和8年1月28日の東京地裁判決(スコットプランニング事件)です。


同社はこれまで定年制がありませんでした。しかし、定年制の新設は労働者にとって退職事由の追加であり不利益をもたらします。就業規則を作れば当然に有効、というわけではありません。


裁判所は定年制を定める就業規則の新設を無効と判断し、定年退職とされた2名について雇用契約上の地位を認め、未払賃金の支払いを命じました。


判決はまず、定年制について、所定の年齢到達で自動的に雇用契約を終了させるものであり、労働者の意思によらない退職事由を追加するものだから、不利益変更に当たることは明らかだとしました。


そして、就業規則が新設される場合にも労働契約法10条が類推適用されるとし、①変更後の就業規則の周知、②変更の合理性という2要件を満たさなければ、労働契約の内容にならないと判断しています。


なお、会社側は「以前から定年制が前提だった」と主張しましたが、実際に定年退職した者がおらず、従業員も社長自身もそうしたルールの存在を認識していなかったことから、退けられました。「暗黙の了解があった」という説明は通用しないと考えるべきです。


ここでいう周知は、労働基準法上の法定手続に限られず、労働者が知ろうと思えば知り得る状態に置く「実質的周知」で足ります。ただし、この要件を欠けば変更の効力は認められません。


そのうえで変更の合理性があったかについて裁判所は以下の3つを指摘して就業規則の新設は無効としました。


①対象者の受ける不利益が非常に大きい

定年年齢を65歳(施行時に超えている者は68歳)とし、70歳までの再雇用の道も残していた点について、判決は制度自体は不合理でないと認めました。しかし、施行時に67歳・65歳だった原告らは、それぞれ4か月後・2年7か月後に退職となる状況でした。定年到達が差し迫っている従業員にとって、不利益は極めて大きいと評価されています。


②特定従業員を退職させる意図が推認された

施行の数か月前から社長と原告の一人との関係が悪化し、異動や給与減額が行われていた経緯から、判決は「就業規則の新設を契機として退職させる意図を有していた」と推認しました。


③手続が不適切だった

社長が過半数代表者の候補を自ら指名しており、選出過程に使用者が関与していた点が問題視されました。加えて、案を示してから意見提出期限までがわずか6日間で、従業員から期間延長を求められたにもかかわらず応じませんでした。


定年制のない中小企業で定年年齢を65歳(施行時に超えている者は68歳)とし、70歳までの再雇用の道も残すという就業規則の新設はそれ自体は問題ありません。しかしそれだけでは就業規則の新設は有効にならないことに注意が必要です。


企業にとっては重い負担ですが、以下の点に注意する必要があります。


a 経過措置を厚めに設ける

本件の場合でいえば、施行時に定年年齢に近い従業員には、猶予期間を十分に確保するなどが考えられます。

b 過半数代表者は労働者側で選出させる

使用者が候補を指名するのは不適切(労基則6条の2)です。

c 従業員側に十分な検討期間を与える

本件の場合は案を示してから意見提出期限までがわずか6日間で、あまりにも短すぎます。

d 導入目的を客観的に説明できるようにする

本件の場合でいえば定年制を導入する必要性を市場の変化、経営悪化、定年を超えた従業員では十分に業務を遂行できないなど具体的に根拠を示す必要があります。

f 周知を徹底する

新旧就業規則について見やすい場所への掲示・備付け等、実際に知り得る状態を十分に確保する必要があります。また説明会の開催なども必要です。


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