最新人事労務耳寄り情報ー「ポストが空いていない」は通用しない?(育児介護休業法10条)
- 23 時間前
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育児休業から復帰する社員について「休業中に代わりの人を配置したので、元の役職には戻せない」という対応はできるのでしょうか。
育児・介護休業法は、育児休業の取得を理由とする降格や減給などの不利益な取扱いを禁止しています。これに違反しないのでしょうか。
令和8年3月27日津地裁判決(クロップス事件)はこの点が問題となった事案です。
同社の従業員として店長を務めていた者が育休終了に際し副店長として復帰し、その後3ヶ月間は調整手当として店長職との基本給の差額分に相当する調整手当の支給を受けました。しかししその後は店長に任命されませんでした。また調整手当も打ち切られました。これを不服として従業員が提訴したというものです。
裁判所は以下の4点を指摘し、育休から復帰した店長を副店長に降格させた措置を育児介護休業法10条に反し違法・無効と判断しました。そして、会社には未払賃金に加え、慰謝料100万円と弁護士費用10万円の支払いを命じました。
①ポスト不足を理由にできる期間は限られる
裁判所は、復帰直後に店長ポストに空きがなかったことは認めつつ、「復帰後3か月を経過してもなお店長職に戻せないほどの支障が継続していたかは疑問」と指摘しました。一時的な調整は許容されても、それが恒常化すれば違法になりうるということです。
②復帰後の処遇ルールを事前に定めず周知していなかった
同法21条・22条は、育休後の配置等をあらかじめ定めて周知すること、円滑な復帰のための雇用管理措置を講じることを事業主の努力義務としています。この会社には「復帰3か月後に評価してから処遇を決める」という運用がありましたが、書面による周知はされていませんでした。裁判所は、復帰時期を把握していながら事前の検討も明示もしていなかった点を厳しく評価しています。
③自社の降格ルールに反していた
この会社の人事制度上、降格は行動評価が2回連続D評価の場合とされていました。ところが本件社員の評価はB評価が続いており、育休復帰を理由とする降格は自社規定にも反するものでした。
④評価の根拠を本人に伝えていなかった
会社は「店長として不適格な言動があった」と主張しましたが、その事実は立証されず、評価シートにも指摘や指導の記載がありませんでした。裁判所は「偏見をもって処遇したことが強く疑われる」とまで述べています。
なお、育児休業終了から1年以内に降格が行われた場合は、行政解釈上、原則として育児休業を「理由」とした不利益取扱いとみなされることにも注意が必要です。
裁判所は「育休制度等を設けることにより、子の養育等を行う労働者の雇用の継続等を図り、その職業生活と家庭生活の両立に寄与する」という法が定める目的を非常に重視しており、この点で従業員に不利益となりうる会社の決定を非常に厳しく判断する裁判例が続いています。
この裁判例もその流れに沿ったものです。
会社としては「ポストが空いていない」は実務上ほぼ通用しないことを前提にする必要があります。
そこで以下のような対応が求められます。
①育休後は当該従業員が原職または原職相当職へ復帰することを予定して代替要員の配置を計画する
②調整手当等で賃金差額を補填することによって金銭面の不利益を解消してもそれだけでは不利益取扱いは解消されないことを認識する
③復帰後の配置・処遇に関するルールを就業規則等に定め、書面で周知する
④育休取得者本人に、復帰後の配置について事前に説明し記録を残す
⑤万一降格を行う場合は、自社の人事制度上の降格要件を満たしているか確認する
⑥人事評価の根拠となる事実を記録し、日頃から本人にフィードバックする
会社としては重い負担ですが、万一これを怠ると本裁判例のように慰謝料の支払義務まで負う可能性があるため注意が必要です。
Written by 法律事務所アイディペンデント










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