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最新人事労務耳寄り情報ー職種限定合意

  • 執筆者の写真: 法律事務所アイディペンデント
    法律事務所アイディペンデント
  • 4月1日
  • 読了時間: 3分

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「私は○○の仕事専門に採用されました。だからほかの仕事は指示されてもしません」と従業員から告げられたらどうすればよいでしょうか?


このことが問題になったのが大阪府立病院機構事件(大阪地裁令和7年1月28日判決)です。


同事件ではある従業員がホスピタルプレイ士(療養生活を送る子どものケア等に携わる専門職)を業務内容として勤務していました。

病院が当該従業員にホスピタルプレイ士業務以外の業務を指示したところ、この指示は人格権侵害に当たるとして差止めを求める訴訟を当該従業員が提起したというものです。


ここで問題になるのが職種限定合意(職種(職務内容)を限定する合意)です。

職種限定合意があるときには、配転命令権はその合意の範囲内のものに限定されます。


単に求人票や労働条件通知書にその業務内容が記載されていた、特定の業務に長期間継続して従事していたという事実があるだけではこの合意は認められません。

しかし、特殊の技能、技術、資格を有する職種や定年までの長期雇用を予定せずに職種や所属部門を限定して雇用される場合にはこの合意が認められやすいため注意が必要です。

たとえば看護師などの医療職、ボイラーマン、リスクアドバイザー、キャディなどについて裁判上認められたことがあります。


また、この合意が認められない場合でも、職務の内容やこれまでの配転の実績から配転命令が無効とされることがあります。

特に業務の系統を異にする職種への異動(事務系の職種から労務職系の職種への異動など)は注意が必要です。


同事件は、ホスピタルプレイ士(療養生活を送る子どものケア等に携わる専門職)として雇用された従業員が、専門業務以外の事務作業等を指示されたことを不服とし、子どもの不安を和らげる専門的な業務のみを行うべきだと主張しました。


これに対し、裁判所は以下の理由で当該従業員の主張を認めませんでした。


・組織運営の実績

看護師等の専門職も付随的、補助的、事務的業務を分担していた実態があり、当該従業員もそのことを認識していたと推認できる

・雇用契約書の記載だけでは不十分

資格名称のみが雇用契約書に記載されていても、その資格の固有業務以外の業務について職務命令をなし得ないとすると、部門の業務が円滑に遂行されない

・前任者からの引継ぎ内容は決定的ではない

前任者が事務的業務を引き継がなかったとしても、それは職種限定の根拠にはならない


同裁判例を踏まえると、雇用側からすれば不必要なトラブルに巻き込まれないよう、これまで配転の実績がない業務や業務の系統を異にする職種の担当指示、配転命令はできる限り避けること、避けられない場合には十分な説明の機会を確保すること、専門業務以外の業務(付随業務。部署全体で分担すべき庶務業務、繁忙期の他部署応援、会議への参加や報告書作成など)が発生することを採用時に説明しておくことが重要です。


ただ法的には付随業務を命じることができても、専門職のモチベーション低下は避けたいところです。そこで専門業務と付随業務の割合を明確にする(例:専門業務7割、その他3割)こと、キャリアパスを明示し、将来的により専門性を発揮できる道筋を示すこと、付随業務も専門性向上につながることを説明することことなども重要です。

Written by 法律事務所アイディペンデント

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