最新人事労務耳寄り情報ー1年単位の変形労働時間制
- 法律事務所アイディペンデント

- 5 日前
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飲食チェーン、学習塾や結婚式場などのように季節や月によって業務量に差があるビジネスにとって1年単位の変形労働時間制導入は大きなメリットがあります。
企業にとっては繁忙期に長めの所定労働時間を設定し、反対に閑散期に短縮することで年間の総労働時間を効率化し、残業代(割増賃金)の負担を軽減できる、従業員にとっても閑散期に休みやすくなるという長所があるからです。同制度の導入には労働者の過半数代表者との労使協定の締結と労働基準監督署への届出が必要です。協定では対象労働者の範囲、対象期間、労働日および各日の労働時間等を定めます。常時10人以上の事業場では就業規則への規定も必要です。
企業にとっても従業員にとってもメリットが大きい同制度ですが、落とし穴もあります。
東京地方裁判所令和7年6月27日(ヤマダ工業事件)は、同制度の運用について参考となる裁判例です。
この事案では、会社は従業員代表と労使協定を締結し、労働日を特定したカレンダーも作成していました。形式は整っていたのです。しかし、実際には従業員がカレンダー上の休日に多数出勤していた実態がありました。
裁判所は杓子定規に考え「労働者への影響が大きいことから、いったん特定された労働日を対象期間の途中で変更することは許されない」として、労働日等の特定要件を満たしていないと認定し、変形労働時間制を無効としました。
その結果、会社は通常の労働時間制を前提とした割増賃金、さらに付加金の支払いも命じられてしまいました。
労使協定を締結してカレンダーを作成しただけでは不十分ということです。定めた労働日・休日を実際に遵守しなければ、制度全体が無効となる大きなリスクがあります。
そもそも変形労働時間制は、予め繁閑を予測してスケジュールを固定する制度です。そのため、突発的な業務変動への対応が難しく、シフト変更が頻繁に発生する業種には適しません。導入前に自社の業務特性を冷静に分析し、年間の繁閑パターンが予測可能かどうかを見極めることが重要です。
恒常的に時間外労働が発生している職場での導入も避けるべきです。制度の趣旨に反するだけでなく、今回の裁判例のように、実態と協定の乖離が生じやすくなります。
導入済みの企業は、カレンダーどおりの運用ができているか、定期的に確認することをおすすめします。
Written by 法律事務所アイディペンデント










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