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最新人事労務耳寄り情報vol.1ー離職証明書にご注意



会社は従業員が離職した場合、公共職業安定所(ハローワーク)長に離職証明書などを提出しなくてはならないと定められています(雇用保険法施行規則7条、同条3項。※1)。


離職証明書とは従業員が離職したことを証明する書類で、会社が離職理由や離職日、直近の賃金支払い状況などを記入したものです。


従業員の離職、特に解雇が問題となる場合労使双方が感情的になることがあります。

会社としては会社に原因があったというような離職証明書を書きたくないと考えるのも、それが正しいかどうかはともかくとして無理はありません。


では、もし感情に任せ会社が離職証明書にウソの記載をしたらどうなるのでしょうか?


最近の事案(水戸地方裁判所令和5年2月8日判決)では、従業員のAさんが退職する際、本当は違うのに勤務先のB社は離職証明書に「労働者の個人的な理由による離職」であり「離職理由に異議」がないとウソの記載をしてしまいました。


このような場合、違法行為になってしまうのでしょうか。


裁判所は以下のような判断をしました。


「Aさんは、解雇により離職したものであり、「非自発的理由による失業」であり、は、B社に対して、解雇されたとの認識を明示していたにもかかわらず、Aさんに、離職証明書に記載する離職理由について何ら確認することなく、本件離職証明書に「労働者の個人的な事情による離職」であり、「離職理由に異議」がないとの虚偽の記載をしたものと認められる。事業主が離職証明書について虚偽の記載をした場合について、罰則が設けられているものであること(雇用保険法83条1項1号。※2)に照らしても、上記のB社による虚偽記載が、Aさんに対する違法な行為であると認められることは明らかであり、B社に上記記載が違法であることについての認識があったものと認められる。したがって、B社による本件離職証明書の不実記載は、Aさんに対する不法行為に当たる。


B社による離職証明書の記載は不法行為、つまり違法行為であると認定されました。

そしてこれを理由として損害賠償の額が増額されてしまいました。


従業員の離職、特に解雇が問題となる場合感情的になるのも無理はありませんが、しかしこのような場合こそ、何よりも会社のために冷静な対応が必要です。


Written by 法律事務所アイディペンデント


※1 雇用保険法施行規則

(被保険者でなくなつたことの届出)

第七条 事業主は、法第七条の規定により、その雇用する労働者が当該事業主の行う適用事業に係る被保険者でなくなつたことについて、当該事実のあつた日の翌日から起算して十日以内に、雇用保険被保険者資格喪失届(様式第四号又は様式第四号の二。以下「資格喪失届」という。)に労働契約に係る契約書、労働者名簿、賃金台帳、登記事項証明書その他の当該適用事業に係る被保険者でなくなつたことの事実及びその事実のあつた年月日を証明することができる書類を添えてその事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に提出しなければならない。この場合において、当該適用事業に係る被保険者でなくなつたことの原因が離職であるときは、当該資格喪失届に、次の各号に掲げる者の区分に応じ、当該各号に定める書類を添えなければならない。

一 次号に該当する者以外の者 雇用保険被保険者離職証明書(様式第五号。以下「離職証明書」という。)及び賃金台帳その他の離職の日前の賃金の額を証明することができる書類

二 第三十五条各号に掲げる者又は第三十六条各号に掲げる理由により離職した者 前号に定める書類及び第三十五条各号に掲げる者であること又は第三十六条各号に掲げる理由により離職したことを証明することができる書類

2 前項の規定によりその事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に提出する資格喪失届は、年金事務所を経由して提出することができる。

3 事業主は、第一項の規定により当該資格喪失届を提出する際に当該被保険者が雇用保険被保険者離職票(様式第六号。以下「離職票」という。)の交付を希望しないときは、同項後段の規定にかかわらず、離職証明書を添えないことができる。ただし、離職の日において五十九歳以上である被保険者については、この限りでない。


※2 雇用保険法

第八十三条 事業主が次の各号のいずれかに該当するときは、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する

一 第七条の規定に違反して届出をせず、又は偽りの届出をした場合

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