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最新人事労務耳寄り情報vol.3ー試用期間にご注意



正社員の採用時には試用期間を設けることが大半です。


もちろん採用側としては実際に働いてもらいその結果適格性がないと判断できた場合には本採用しないとしたいからです。


この本採用拒否について、裁判所はたとえば


・コンピュータソフトウェアの研究開発等を行う会社で即戦力となる高度人材として採用された者がコミュニケーション能力が求められる水準に達していなかった(①プレゼンの際に膨大な量のスライドを作る、②時間を大幅に経過する、③聞き手の聞きたい内容ではなく自分の興味のあるテーマを一方的に伝達しようとするなど)(東京地方裁判所令和3年11月12日)


という事案において本採用拒否を有効としています。


この裁判例だけを見ると「採用したけど期待外れだった」というレベルでも試用期間経過後の本採用拒否は自由にできそうです。

しかし多くの裁判例上、本採用拒否は一般に考えられているほど簡単にはできません。


たとえば


・保険代理店で採用者が①通常より高額な通勤定期代を請求した、②社内清掃や休日出勤に非協力的だった、③就業時間中に会社のパソコンで内部告発文書を作成した(東京地方裁判所平成24年8月23日)

・動物診療施設等を経営する会社で採用者が①請求金額のミスや処方のミスをし、②カルテの記載が不十分だった、③院内での学科試験の成績が望ましい水準ではなかった(東京地方裁判所平成25年7月23日)

・ベンチャーキャピタルにおいて親会社会長に対し声を出して挨拶しなかった(東京地方裁判所平成13年2月27日)


という事案で裁判所はいずれも本採用拒否はできないとしています。


裁判例上本採用拒否ができるかできないかについて具体的な基準はまだなく、むしろ通常の解雇が認められるか否かと同じように考えた方が安全でしょう(冒頭の裁判例は即戦力として採用され想定年収が相当高額だった(1560万円)ことが裁判所の判断に影響しているものと考えられます)。

少なくとも新卒者について「試用期間中なら期待外れだった場合には簡単にクビにできる」というような考え方は誤りです。


採用難が深刻になっています。

しかし「人手が足りない。この人はちょっと危ない感じがするけどとりあえす採用して自社にフィットするか試用期間で様子を見よう」という考え方は危険です。

Written by 法律事務所アイディペンデント


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