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会社と私の「メメント・モリ」vol.3-もし従業員が亡くなったら?


従業員が健康で永く働ける職場作りは経営者の務めですが、残念ながら従業員が亡くなるケースもあります。この場合会社がしなければならないことは多く、注意が必要です。


まず雇用保険、健康保険の資格喪失手続を行います。期間が短い(前者は10日、後者は5日)ため注意しましょう。また遺族年金等遺族側の手続を丁寧に説明して遺族の心の負担を減らしましょう。


自殺や過労死が疑われる場合、さらに慎重な対応が必要です。死亡の原因次第で訴訟リスクが高まります。早急に事実関係の調査を開始し、訴訟を避けるため専門家に相談しましょう。


次に、従業員の相続人を名乗る人物が賃金の未払い分や死亡退職金の支払いを求めてきた場合、そのまま払ってよいのでしょうか?


法律上、従業員が死亡し相続人などの権利者が給与などを請求してきた場合、会社は7日以内に支払わなければならないとしています(労働基準法23条1項)。


しかし、言われるがままに支払うことは会社にとって危険です。

その人物が相続人である確証はありませんし、相続人だったとしても相続人間の争いに会社が巻き込まれるおそれがあります。会社としてはまず戸籍謄本等を確認し相続人が誰かを確認してから相続分に応じ支払うべきです。もし間違って支払った場合、後で正当な相続人が現れると正当な相続人に別途支払わなくてはならなくなります。

もし相続人の証明が不十分な場合、法務局に供託しましょう。


なお、賃金と違い死亡退職金については就業規則で受取人をあらかじめ定めておけば、受取人にのみ支払えばすみます。トラブルに巻き込まれるリスクを減らせますので就業規則を確認してみましょう。


では身寄りのない従業員が死亡した場合はどうでしょうか。相続人が不明でも給与等の支払義務は消えません。

いつ相続人が現れても困らないよう、賃金などを保管しておく必要があります。

賃金の時効は3年、退職金の時効は5年です。


これらの作業は会社にとって大きな負担です。家族の関係性が希薄になっている現代、今後さらに身寄りのない人が増えることが予想されます。従業員に家族のことを聞くのはNGという世の中ですが、これらのリスクを丁寧に説明したうえで緊急連絡先は定期的に確認しておくと安心です。


Written by 行政書士事務所アイディペンデント

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