
管理監督者とは、経営者と一体となって労務管理を行う立場にある者を指します。
労働基準法41条2号によりこの管理監督者は労働時間、休憩、休日に関する規定の適用が除外されます。
管理監督者にあたれば残業代を支払う義務がないという文脈でよく報道されています。
この点が争われた大阪地裁令和6年3月14日判決は取締役の肩書を与えられた従業員が残業代の支払いなどを求めて提訴したというものです。
取締役という肩書がある以上、一見経営者と一体となっているとして管理監督者にあたりそうに見えます。
しかし裁判所は管理監督者にあたらないとしました。つまり勤務先の会社に残業代の支払いを命じました。
裁判所は以下の点から管理監督者にあたらないとしました。
①経営への関与度
年1~2回の経営会議への参加があっても、重要な意思決定への関与は限定的だった
取締役会での決議事項も人事や報酬に限られていた
②労務管理権限の実態
部下の配置や仕事の割り当ては行っていたものの賃金や処遇に関する決定権限はなかった
③勤務実態
タイムカードによる労働時間管理を受けていたし、業務内容も一般従業員と大差なかった
④待遇面
役職手当はあったものの、管理監督者にふさわしい処遇とは認められなかった
これは従来の裁判例である、管理監督者であるかの判断について形式的な役職名や地位ではなく、実質的な権限や処遇、業務実態を重視していることを示すものです。
④については会社側は当該取締役に月14万5000円又は15万5000円の職務手当を支給していること、年間利益分配金(約30万円)や役員交際費(年間10万円から15万円程度)も支給していることを主張しましたが受け入れられませんでした。一見かなりの支給があったように見えますが実際には当該取締役への総支給額は400万円台後半だったことが影響していると考えられます。実態を伴った権限付与と適切な処遇が重要であることがわかります。
Written by 法律事務所アイディペンデント
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