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最新人事労務耳寄り情報ー機密情報管理




近年、従業員による企業の機密情報の漏洩が大きな問題となっています。最近の裁判例として、経理部長代理が会社の機密情報を私的に持ち出したケースがあります(スカイコート事件・東京地判令和5年5月24日)。


同事件では経理部長代理が約8000件ものファイルデータを持ち出していました。しかもそのデータには取引先情報や財務状況に関する情報が含まれていました。また部長代理は当初そのデータが記録されたUSBメモリを駅のゴミ箱に捨てたと嘘の説明をしていました。


このような事態を未然に防ぐための体制作りが大切です。


■機密保持規定の整備

まず重要なのが、就業規則等での機密保持規定の整備です。以下の3点に特に注意が必要です。


①機密情報の具体的な特定

「会社の秘密を漏らしてはならない」という抽象的な規定だけでは不十分です。どのような情報が機密なのかを具体的に列挙しましょう(たとえば顧客情報、取引先情報、営業データ、技術情報、経営戦略に関する情報など)

②退職後の機密保持義務

在職中の機密保持義務は当然として、退職後の機密保持義務についても明確に規定する必要があります。これは就業規則で定めるだけでなく、退職時にも誓約書を取得した方がよい場合があります。ただし、退職後の義務については合理的な範囲に限定することが重要です。無制限な制約は無効になる可能性があります。

③具体的な禁止行為の明示

機密情報の外部への持ち出しや、私的な使用の禁止など、具体的にどのような行為が禁止されるのかを明確にしておきましょう。


■日常的な情報管理の徹底

規定の整備と同時に、以下のような実務的な対応も重要です。

①アクセス制限の設定

②パスワード管理の徹底

③情報機器の持ち出し、持ち込み制限

④秘密表示の徹底

機密文書には「機密」「社外秘」などの表示を行います。スカイコート事件では不正競争防止法上の秘密管理性が認められませんでした。その理由の一つとして、文書への秘密表示が不十分だった点が指摘されています。

⑤教育・研修の実施

定期的に従業員向けの教育・研修を実施し、機密保持の重要性を周知することが大切です。


■最後に

機密情報の管理は、事前の予防措置が最も重要です。いったん情報が漏洩してしまえば、取り返しがつかない事態となりかねません。

スカイコート事件でも経理部長代理は懲戒解雇され裁判所はこれを有効としましたがいったん漏洩した情報、失われた信頼は取り戻せません。

規定の整備と実務的な対応の両面から、適切な情報管理体制を構築することを心がけましょう。また、定期的に管理体制を見直し、必要に応じて改善を図ることも重要です。

Written by 法律事務所アイディペンデント

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