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最新人事労務耳寄り情報ー技能実習と説明義務



技能実習制度は、開発途上国等の外国人材を日本で一定期間(最長5年間)受け入れ、OJTを通じて技能を移転する制度です。実習生は、1号(1年目)、2号(2~3年目)、3号(4~5年目)と段階的に技能を習得していきます。


団体管理型技能実習の場合、実習実施者(企業)は監理団体の支援を受けながら実習を行い、技能実習計画の認定や在留資格の変更など、様々な手続きが必要になります。


大阪地裁令和5年9月28日判決の事案では、ベトナム人技能実習生が、在留期間満了までに技能実習2号への移行ができず、帰国を余儀なくされたことについて、実習実施者と監理団体に対して損害賠償を求めたというものです。


実習実施者は労働基準監督署から是正勧告を受けたため技能実習計画の認定が遅れ、在留期間満了までに技能実習2号への移行ができなくなりました。実習実施者と監理団体は実習生に対して「一時帰国するしかない」と説明しました。しかし実は在留資格を「短期滞在」に変更する方法がありました。それにもかかわらず、その説明をしなかったのです。


裁判所は、実習実施者と監理団体の双方に、以下の理由で説明義務違反による不法行為責任があると判断しました。


・技能実習を継続するための手段(短期滞在への在留資格変更)があったにもかかわらず、その説明を怠った

・この方法は特異なものではなく、実際に他の実習生は同じ時期に在留資格変更が認められていた

・両者は共同して実習生に対する説明を行っており、共同不法行為に該当する


技能実習制度は法改正が相次いでおり、また行政の監視監督も厳しくなっています。

実習生に対する説明義務は、技能実習制度の適正な運用の根幹をなすものです。実習実施者と監理団体は、実習生の権利を守りつつ、制度の趣旨に沿った運用を心がけることが重要です。

意図しないトラブルで損害賠償責任を問われないために最新の制度運用を常に把握するとともに、各種手続について可能な限り実習生の母国語での説明文書も用意し、説明時の実習生の理解度や反応も記録しておくことが大切です。

Written by 法律事務所アイディペンデント

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