カラーユニバーサルデザインという言葉をお聞きになったことはあるでしょうか。色覚(色を識別する感覚)の異常に配慮したデザインです。
先天色覚異常の方は、日本人の場合、300万人以上いるとされています。色覚に異常がある場合、たとえば緑と青、紫と青の区別が難しくなったり、濃い赤がほとんど黑と同じように見えたりします。しかし、情報の受け手が誰かによってその伝達内容に差が出ると問題が生じます。
たとえば信号機が一部の人に見えにくい配色や構造になっている場合、その人には大きな不利益ですし、事故にも繋がります。
実は最近普及したLED信号機は色覚異常の方には見えにくく、実際に2人の方が亡くなるという不幸な事故も起きています。
このようにカラーユニバーサルデザインは人の生命にも関わるとても大きな問題ですが、デザイン性との両立が課題でした。
この点を解決する技術を株式会社リコーが開発しました(特開2018-10509、※1)。
これは、画像をカラーユニバーサルデザインの観点から分析し、改善が必要な部分にはこれを指摘し、対応策も提示するというシステムです。これまではチェックリストや配色セットなどを使っていたカラーユニバーサルデザインがコンピュータの力を借りてより簡単に、デザイン性も保った形で実現できます。画期的なシステムだと思います。
このカラーユニバーサルデザインは、先天的色覚異常以外のすべての人々にも大きな意義があります。
そもそも人の色覚は加齢に伴い衰えていきます。特にブルー系の色が見分けにくくなります。また、多くの方は白内障になります。そして、白内障になるとやはり色覚が衰えます。研究によれば、白内障は「初期混濁も含めると白内障は50歳代で37〜54%、60歳代で66〜83%、70歳代で84〜97%、80歳以上では100%にみられます。」とされています(※2)。
そのため、色覚の衰えはなかなか自覚できないことも手伝って、高齢者は正確な情報を受け取れないリスクが高まります。たとえば電光掲示板、地図、企業のウェブサイトなどは様々な色が用いられていますが、カラーユニバーサルデザインの考え方を残念ながら取り入れていないものが多くみられます。
そうすると情報が正確に受け取れない可能性が出てきてしまいます。また、ウェブサイト、ポスターやチラシなどでプレゼンテーションをする側はよいデザインだと思っていても、実はこれを見ている高齢者の方にはあまり響かないデザインになっている可能性があるとも言えます。せっかくすてきなデザインの媒体を作っても、高齢者の方には見えにくかったらもったい
ないですよね。
カラーユニバーサルデザインの普及は、いずれ高齢者になるすべての人が末長く安全に暮らせる世界につながります。
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※1 詳細をお知りになりたい方は特許庁の開設した検索サイト
の「公開番号・公表番号(A)」欄に
にて「2018-10509」と入力して検索してみてください。
※2 「科学的根拠(evidence)に基づく白内障診療ガイドラインの策定に関す
る研究-患者用説明書-」
(公益財団法人日本医療機能評価機構 Minds ガイドラインライブラリ)
Written by 法律事務所アイディペンデント
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