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もちとユニバーサルデザイン


嚥下障害という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。食べ物などを呑み込む機能がうまく働かないことです(※1)。嚥下障害は、誤嚥(呑み込んだ食べ物などが誤って気道に入ること)の原因です。


この誤嚥による事故は、正月にもちを喉に詰まらせて高齢者が亡くなるという不幸なニュースの形でマスコミをよく賑わせています。


そればかりでなく、肺炎入院患者のうち誤嚥性肺炎によるものの割合は、80歳代では80パーセント以上、70歳代では60パーセント以上、60歳代でもおよそ半数、50歳代でさえ20パーセント以上になるなど、ニュースで報じられている以上に深刻な問題です(※2)。


しかし、誤嚥を防ぐために流動食ばかりというのでは生活の楽しみが失われます。


これを解決しようと、味や香りなど風味は普通の餅と同じでありながら、嚥下が難しい人でも安全に食べられるもちを名阪食品株式会社が開発しました(特許第6081004号※3)。


このもちは、原材料とその組み合わせの工夫、新しい製造方法などにより、見た目も風味も従来型のもちそのものでありながら、舌で容易に潰して飲み込むことができるようになっています。食べやすく、呑み込みやすいだけでなく、見た目も美しいもちになっています。

(名阪食品株式会社 「ソフトもち(特許取得)」)


実際、高齢者の方の「これまでと少しでも同じものを食べたい」というニーズは大変高いものです。また、このもちは食べ物を喉に詰まらせやすい幼児にも安心ですから、高齢者から幼児まで幅広い世代に意義のある食品です。


実は、この嚥下障害は、このもちのような固形食品だけではなく、飲料でも問題になります。うまく飲み込めないからです。そして、嚥下障害をもっている場合、ストローで飲料を飲むことが多いです。


しかし、ここで1つ問題があります。たとえばビールのような発泡性飲料です。ストローでビールを飲んでも美味しくないと感じる方が多いのです。発泡性飲料の特色なのか、あるいはアルコール飲料の特色なのか、ストローで飲むことで風味が変わってしまいます。


そこでストローの形を幅広にするなどして個々で工夫して少しでも美味しくビールを飲めるようにして楽しんでいる方もいらっしゃいます。

もし、嚥下障害の方の意見を取り入れビールの風味をまったく損なわないで飲めるストローの開発が進めば、年齢を重ねてもビールを末長く楽しめます。また、嚥下障害がなくとも、バーベキューや野球観戦の際など、屋外でビールを飲む際も便利になります。ふた付きストローであればこぼしにくいですし、ゴミも入りにくいからです。


ユニバーサルデザインの考え方は、餅やビールなどの食品分野でも新しい展開を生む豊かな可能性があります。


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※1

(日本気管食道科学会 嚥下障害)

※2

(厚生労働省 高齢化に伴い増加する疾患への対応について)

※3

詳細をお知りになりたい方は特許庁の開設した検索サイト

の「特許番号(B)・特許発明明細書番号(C)」欄に

にて「6081004」と入力して検索してみてください。

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